熱帯飼育。
完結済。
2.理科室とオンボロハウス。 その日は何の前触れも無くやってきた。 いつもの放課後、いつもの場所で、僕は平穏に満ち足りた日常を過ごして居た筈なのに…。 温室を見下ろす位置にあるその窓は、いつもカーテンが閉じたままの理科室のだった。 僕に断りも無くやってきた非日常は、実は最初からもう壊れて動き出していた、運命の歯車だったのかもしれない。 そう、理科室がそこにあった為。温室がここにあった為に…。 カーテンの中には、二つの妖しい影があった。 「…いかがで…?研究の方は。」 「…君か。……この薬に何が足りないのか…判った。」 そう答えた方の影は、意味あり気に笑みを浮かべると窓の外を覗き見ながら、付け加える様に言葉を続けた。 「蘭の…成分…。そして実験体だ…。」 そう言って外を見続ける影に、それを聞いたもう一方の影も、にやりと笑って尋ねた。 「では、いよいよ例の計画を…?」 その問いかけに返事はなかったが、影はその視線をそらす事無く、只、掌をけだるくひらつかせただけだった。 「…御意。」 影の動きに、全てを理解したかの様に言葉を残して、もうひとつの影は消えた。 そうしてその部屋には、外を見続けたままの影のみになった。
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